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辺縁系と網様体
- 辺縁系
- 動物の本能行動や感情(情動)内臓機能の調節などを支配する領域
- 大脳の底面と脳幹にかけて存在
- 辺縁系に属す大脳皮質領域 $\rightarrow$ 発生学的にも古い領域
- 脳幹部 $\rightarrow$ 生命の維持に直接関係した領域が散在
- 網様体
- 中脳・橋・延髄を含む脳幹部分
-
睡眠・覚醒・意識と関係があると言われている
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- 大脳辺縁系は,どの動物でも進化とともに広がっている
- 大脳皮質領域と比べると,高等動物になるにつれての急激な進歩はない
- 新皮質が学習や記憶に関係した高次機能と深い関係があり,辺縁領域が動物に共通する何らかの関係を持っていることと関連しているだろう
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視床下部と自律神経 -身体の調節機構-
- 視床下部
- 脳幹の中心部にある視床の下(腹側)にある
- たくさんの神経核が散在している複合領域
- 視床下部に色素を注入 $\rightarrow$ 脳を除いた体の基幹組織を染め出せる
- 色素が血管から染み出して組織細胞に入るから
- 一方,脳には,血液脳関門があり,色素の侵入を防ぐ
-
視床下部の一部分のみ,染色される $\rightarrow$ この領域には血液脳関門がない
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- 脳は外界に影響されることがなく常に一定の機能を果たす必要がある
- 血液脳関門によって保護されることが重要
- ex. 食べるものによって考え方が変わると困る
- 外界と全く隔絶される $\rightarrow$ 環境適応能力をもつ脳の働きも意味を持たなくなる
- 視床下部は,外部環境と中枢神経系の間を取り持つ働きをしている
- 生命活動の根源である本能・恒常性の維持のために働く
- 食欲や性欲などの欲求
- ホルモン調節
- 自律神経系の最高中枢
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食欲の調節機構
- 食欲を調節する領域
- 摂食中枢: 視床下部の外側部
- 満腹中枢: 視床下部の内側部
- それぞれを破壊すると,エサを食べようとしなくなったり,満腹を感じなくなったりする
- お互いに拮抗する働きをしている
- 外部の環境によって一方が優勢になると,食欲が発生したり,満腹感が得られたりする
- 口の中に食べ物を入れると,飲み込む反射機能が延髄にある
-
視床下部は食欲を介して,高次な摂食行動に関係する
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- 血中のぶどう糖濃度
- 食事をする $\rightarrow$ 上昇
- 空腹になる $\rightarrow$ 低下
- このぶどう糖の血中濃度の変化(or 動脈血と静脈血の濃度差) $\rightarrow$ 摂食・満腹中枢のどちらかに作用が及ぶような仕組みがあると考えられる
- 体内に取り込んだエネルギーと消費したエネルギーの差が,血中に遊離している脂肪酸の量の違いとなって現れ,満腹中枢を活性化さえるという考えもある.
- ぶどう糖濃度の日周変動により食欲がコントロールされ,脂肪酸濃度の変化により,成長に伴なう長期的な体重増加が起こるという考えもある
-
このメカニズムはよくわかっていない
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- 大村らの研究
- 麻酔したラットの視床下部の摂食中枢から単一ニューロン活動を記録
- ぶどう糖を投与すると活動が低下
- 遊離脂肪酸を投与すると活動を促進されることを見つけた
- 満腹中枢のニューロンからは…
- ぶどう糖の投与が活動の促進に
- 遊離脂肪酸の投与が活動の低下に
-
それぞれの中枢のニューロンは,他の様々な物質に対しても感受性を持っている
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- ロールスらの研究
- サルの視床下部外側部(摂食中枢)のニューロン活動を記録
- 空腹時に好物の食べ物を見ると反応
- 好きでない食べ物や食べ物でないと反応しない
- 好きな食べ物の味に反応するニューロンも発見
- 満腹時にはこれらの反応が起こらない
- 大村らの研究
- 摂食中枢は単に食欲を起こすためだけでない
-
その欲望を満たすための行動(摂食行動)を作り出すのにも関係すると主張
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- これらの領域の近くには,飲水行動と関係している部位があり,飲水中枢と呼ばれる
- この部位を電気刺激すると飲水行動が起こるようになる
- 逆に,破壊すると動物は水を飲まなくなる
- この領域のニューロンは,高濃度の食塩水やアンギオテンシンに感受性を持っている
- アンギオテンシン: 体液が失われると腎臓から放出されるホルモン様物質
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性欲の調節機構
視床下部の内側視策前野 - 性欲の中枢として機能 - テストステロン(男性ホルモン)やエストロゲン(女性ホルモン)に対して感受性がある - これらの物質をこの領域に投与すると性行動が促進される
- 視床下部の内側視策前野を刺激
- オスでは,マウンティング行動や腰のスラスト運動,ペニスの勃起・射精などが起こる
- メスでは,クリトリスの拡大や発声が見られる
- ラットやモルモット・サル・ネコ・サルなどの多くの動物で見られる
- 逆に破壊する
-
異性に対して無関心になり,性行動不能になる
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- この領域において様々な動物のニューロン活動を記録
- オスラットを用いた研究(ニューロン活動の記録)
- 24時間連続で活動をモニターできる埋め込み方電極を脳に刺す
- 自由に動ける時には,低頻度の発火活動をする
- メスラットを入れると,途端にニューロンの発火頻度が高まる
- 高頻度の発火活動 $\rightarrow$ オスラットがマウンティング行動 ~ 射精まで続く
- 性行動が終わって満足感が得られると,ニューロンの発火活動は低レベルに戻る
-
サルのこの領域のニューロンは,単に性欲を発生するだけではなく,性欲を充足するための行動を発現させるためにも重要な役割を果たしている.
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- メスの視床下部
- 生殖・育児に関係する生理現象や行動が誘発される領域が存在
- ex. 室傍核と呼ばれる場所:
- オキシトシンというホルモンを分泌する神経分泌細胞が存在
- オキシトシンが血液中に分泌: 乳首から乳汁の分泌が起こる.
- これらの領域のニューロンは性ホルモンに対して感受性を持っている
-
脳とホルモンのバランスをとりながら生殖活動は営まれている.
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- 性行動の全てを視床下部が支配しているのではない
- オスのネコやネズミの大脳新皮質を除去する $\rightarrow$ 性行動が円滑に行えない
- 新皮質は単に本能を抑制するわけではなく,理性と感情が強調して働くことで性行動がうまくいくのではないか
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体温の調整と日周リズム
- 視床下部の外側視策前野とその周辺部 $\rightarrow$ 体温の調節に関係している領域が存在
- 外側視策前夜を電気刺激する
- 皮膚の拡張が起こり,動物が喘ぎ始める
- ここを破壊すると,熱の放散ができなくなり体温が上昇してしまう
- 後部視床下野という領域を刺激すると,ふるえが起こる
- 中山らの研究
- 外側視策前野とその周辺部からニューロンの活動を記録
- 温受容ニューロン: 温度が上昇すると発火頻度が増える
-
冷受容ニューロン: 温度が下降すると発火頻度が増える
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- 視床下部のこの領域は,外界の温度変化を検出し,それに伴った,熱を産生したり逆に放熱したりして,一定の体温を保つように働いている考えられる.
- 視床下部の視交叉上核と呼ばれる部位を破壊
- 動物の行動が外環境の明暗サイクルに同調しなくなる
- 自発的な運動の活性や,飲水行動・覚醒睡眠サイクル・体温と性周期・ホルモン分泌などの日周リズムがまったく消失してしまう.
- この領域は,網膜のししんけいから 直接入力を受け付けている
-
明暗の情報によって活動レベルを変動させていると考えられる
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- しかし,動物を暗い一定温度の部屋で飼育しても,24 時間の周期のリズムはそのまま残っている
- 中枢神経系の内部に,自発的にリズムをつくるメカニズムが存在していると言える
-
ヒトにも内在的なリズムが存在 $\rightarrow$ 24.5時間ことが確認
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- ラットの脳でも日周リズムによる活動の変動が記録できた.
- 視交叉上核の周辺にナイフを入れる
- この領域への入力を断ってから,ニューロン活動の記録をすることで確認
- 生きた脳全体がなくても,
- この領域だけをふくんだ薄い脳のスライスを取り出してきても
- つまり,視交叉上核は,視覚入力がなくても,日周リズムを生成できる.
- 日周リズムの変調を送り出す出力線維は,視床下部や中脳網様体領域に広い投射を持っている
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ホルモンと自律神経系の調節機構
- 視床下部は,脳下垂体にも大きな影響力を持つ
- 脳下垂体: ホルモンの総本山と言われている
- 視床下部から脳室内にぶら下がった形
- 前葉,紅葉などのいくつかの部分に分けられる
- 副腎皮質や甲状腺,性腺などは,それぞれ体に必要なホルモンを産生する
- 脳下垂体からその産生量を促進したり抑制したりする物質が放出
-
神経分泌細胞が下垂体の調節ホルモンをコントロールしている
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- 神経分泌細胞は,細胞体の一端から,ホルモン放出因子を放出
- 通常のニューロンが伝達物質を放出するのと一緒
- ホルモン放出因子: ホルモン放出を調節している特殊なホルモン
- 視床下部の大型神経分泌細胞
- 軸索末端が脳下垂体後葉に終わっている
- 利尿に関係したバソプレッシンや授乳に関係したオキシトシンなどを分泌
-
下垂体後葉ホルモンは,血液に混じって身体の各器官に運ばれる
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- 視床下部の小型神経分泌細胞
- 視床下部の内部で小説ホルモンを分泌放出している
- 放出されたホルモンはすぐに血管内に入り,下垂体前葉の内部で門脈系へ運ばれる
- 下垂体門脈系に到達したホルモンは,腺細胞を刺激して,下垂体前葉ホルモンの分泌を促す.
-
これらのホルモンは,再び下垂体門脈系に放出されて,身体の各機関に送られる
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- 身体の各器官に運ばれた下垂体の調節ホルモンによりホルモン分泌を促進
- ex.
- 甲状腺刺激ホルモン: 成長調節に関係した甲状腺ホルモンの分泌を促進
- 副腎皮質刺激ホルモン: 副腎皮質から体液調節に関係したアルドステロンや,血糖調節に関係したコルチゾルなどの,副腎皮質ホルモンの分泌を促進
- 各器官のホルモンの放出は,下垂体の調節ホルモンによって,下垂体の調節ホルモンの放出は視床下部のホルモン放出因子によって調節されている
-
ホルモン調節: 視床下部 $\rightarrow$ 脳下垂体 $\rightarrow$ 各器官の多重構造
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- 視床下部のニューロンは,身体の各器官から放出されるホルモンに対して感受性を持っている
- ホルモンの産出量が多い時は,神経分泌が減少
- 最終的にホルモンの産出量を抑制する
- 中枢神経系と同様のフィードバック機構
- 急激な作用ではなく,比較的緩やかに働く
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扁桃体 -情動の中枢機構-
- 扁桃体: 辺縁系に属している最も重要な核
- 機能のことなったいくつかの亜核から構成される
- 大脳皮質の側頭連合野や前頭連合野や視床下部と線維連絡を持つ
- 扁桃体が連合やの認知機構と視床下部の本能行動とを結びつける仲立ちをしていることを示唆
- 梨状葉と呼ばれる大脳辺縁系皮質も情動と深く関わっている
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情動に関係した領域
- emotion: 怒りや恐れ,喜び・快感・不快感のような心の動き
- 情動はいったん生起すると,長い間人や動物の行動に影響を与える
- パペッツ
- 辺縁系を循環している神経回路
- いったん情動が生じる: 活動がこの回路を回り続けると仮定
-
後の研究で,海馬や扁桃体が側頭連合野と並んで記憶に関係していることが明らかに
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- ネコの扁桃体や梨状葉のある部位を電気刺激する
- 攻撃行動や逃避行動が起こる
- ヒトでも同様に,怒りや恐怖の体験が起こったという報告も
- また,破壊すると凶暴性が無くなったり,犬を恐れなくなったりなど
- 扁桃体や梨状葉は情動と深く関わっている
- 電気刺激によって怒りが起こる領域 $\rightarrow$ 視床下部にも
- 視床下部を電気刺激すると怒り反応がひとそろい起こる
-
この領域が怒りの中枢とする説も
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- 大脳新皮質を除去したイヌやネコ
- 新皮質がない $\rightarrow$ 外部環境から受ける怒りの体験を伴わない
- 視床下部は単に怒りの実行機関に過ぎないのでは
- 新皮質の情報を受けて視床下部に入力を行っている扁桃体が怒りの情動を発生してるのでは
- 大脳新皮質がないと,動物が怒りやすくなる
- 正常な感情の発言のためには新皮質の情報処理が必須
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認知機構と情動
- ある特定の刺激が 情動と結びつく
- 相当微妙な感覚情報の処理が必要になる
- ex. 恐怖心を引き起こす: ふさわしい場面設定
-
過去の経験があってそれを想起でき,状況を見分ける能力が備わっていることが条件
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- 恐怖を引き起こす要因
- 視覚的なもののみでなく,音やにおい,過去の体験なども恐怖のもとになる
- すべての感覚様式および記憶が情動を生み出す領域に収束しているのでは
- 情動そのものは,動物本能に根差した低級なものかもしれない
-
引き起こすためにはかなり高級な情報処理が必要
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- 側頭連合野にある「顔ニューロン」
- 側頭連合野と繋がっている扁桃体にも,このような認識と関わるニューロンがある
- 中村ら $\rightarrow$ 顔であればなんでも応答
- サルの扁桃体ニューロンの活動記録
- ある特定の人を見たときだけに高い活動を示す
- 比較すると,扁桃体ニューロンはさらに特殊化の進んだ応答をしている
- 別の扁桃体ニューロンでは,ある特定の表情をしているときだけ活動をしていることがわかる
-
特定の表情を認識する $\rightarrow$ 特定の情動を誘発する
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- 小野ら
- さらに別の扁桃体ニューロンを発見
- サルに注射器の様な嫌悪物を見せたとき
- 食べ物にだけ応答
- 視床下部のニューロンの様に,遂行する以前から徐々に活動が高まる様なニューロンは観察されない
- 摂食行動や本能行動と直接結びつく様な視床下部タイプの活動はないということ
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海馬と大脳辺縁系 -長期記憶の機構-
- 海馬: 大脳皮質の周辺部あたり,側頭葉が脳幹部分につながっている領域
- 非常に幅広い領域と線維のやりとりがある
- 情報の集配センターとして働いているのでは?
- 学習・任意・記憶などと関連した多彩な機能を持っている
- 大脳新皮質のあまり発達していないラットなどでは,この海馬領域の役割の重要性は,新皮質の発達した霊長類とは比べ物にならないほど高いと考えられている.
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記憶の学説と海馬
- 記憶の多数の側面
- 記銘: 覚えるべき情報を入力すること
- 保持: その情報を保ち続けること
- 想起: その情報を必要な時に引き出すこと
- これらのすべての機構が備わってなければならない
- どれか一つでも書けると,記憶障害が起こる
- 忘れる ≠ 脳に蓄えられていない
- 再認: 手がかりを与えると忘れていたものを思い出せる
-
手がかりがある分,想起よりも簡単
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- 記憶に関する学説
- 短期記憶と長期記憶
- 作業記憶と参照記憶
- エピソード記憶と意味記憶
- 多くが海馬の周辺領域に関係がある
-
海馬ニューロンはシナプス変化による長期増強を起こす
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短期記憶と長期記憶
- 記憶を短期記憶と長期記憶に分ける考え方は古くから存在
- 古典的な見解
- 前頭連合野が短期記憶の機能
- 側頭連合野が長期記憶の貯蔵庫
- よくわかっていない
- たぶん,現在は違う見解だろう
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作業記憶と参照記憶
- コンピュータにある2種類のメモリー領域
- 内容が消去されないで蓄積されるメモリー領域
- プログラムの実行のたびに内容が書き換えられるメモリー領域
- このような記憶の仕方は神経系でもあてはまる
- ラットの実験より,海馬が作業記憶であると提唱される(参照記憶はわかってない)
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エピソード記憶と意味記憶
- 記憶を頭で覚える: 宣言記憶
- 知識としての意味記憶
- 個人の体験の思い出としてのエピソード記憶
- 身体で覚える: 手順記憶(手続き記憶)
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認知地図と作業記憶
- どこに何があるかや,学校への経路など,意識しない $\rightarrow$ 認知地図を参考する
- 現実のユークリッド空間を忠実に反映しているのではなく,個人に偏りがある
- 学生を対象にした実験
-
認知地図をもとに40%の学生が書いた地図では,道路や建物の角度は無視される
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- ラットを用いた実験
- 認知地図が海馬に存在していると考えられている
- ミルク状の白濁水に,足場としてプールの真ん中に台を置く
- 台を沈めて登るを繰り返す
-
暗い部屋の丸のプールだと学習できなくなる $\rightarrow$ 部屋の情報から学習
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- 海馬を破壊したラット
- 台の位置を覚えれない
- 通常の迷路学習にも障害が現れる
- 迷路学習中のラットの海馬のニューロン活動を慢性的に記録
- 迷路上の特定の位置にきたときだけ活動するニューロンがある
- 特定の海馬ニューロンが,特定の空間位置に関係
-
海馬 = 認知地図機能説をサポートしていそう
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- 同様の迷路実験から,海馬は作業記憶に関係しているというまったく異なる考えも
- 真ん中を起点に17方向に伸びる迷路を作成
- 効率よく餌を取ることを学習したラットは,餌をとった枝以外に入る
- 一方,海馬を破壊したラットは,餌を見つけた枝に何度も入ろうとする
-
参照記憶に影響はないが,作業記憶が損傷を受けた結果ではと主張
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- 認知地図説と作業記憶説とが相容れないものかはわかっていない
- 海馬領域が相対的に重要だとされているラットの結果が,新皮質が大事とされる霊長類に当てはまるかもわからない
- サルを用いた記憶学習課題でも,空間位置の記憶に海馬ニューロンの活動が記録
- 高等動物の海馬量いいでも類似の機能がありそう
- 補足: 海馬の脳モデルを模倣した研究で,空間における自己認識が示された
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海馬周辺と長期記憶
- 必須ビタミンが欠損したために起こるコルサコフ症候群 $\leftarrow$ 認知症の一種
- 特有の健忘症: 古いことはよく覚えているが,新しいことはすぐに忘れる
- 脳を調べると,側頭連合野の他,海馬や扁桃体・乳頭体に萎縮が見られる
- 視床背内核は前頭連合野に強い投射を持っている
-
短期記憶から長期記憶への移行過程でなんらかの支障をきたす可能性
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- 短期記憶や作業記憶のテスト
- 遅延反応などいくつもの課題が考案・動物実験で使用される
- 長期記憶のメカニズムは難しい
- ヒトの場合,言語を使った記憶テストができるが動物は不可能
- 記憶の再認の過程
- 遅延非見本合わせ課題が考案
- 二つの対象物体を同時に見せて,始めてみたら餌がもらえる
-
海馬や扁桃体が破壊されると,成績が低下
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- ヒトでもサルでも側頭連合野とその周辺部が破壊されると,クリューバー・ビュシー症候群という特有の症状が現れ,コルサコフ症候群タイプの記憶障害が起こる
- 側頭葉の外側部だけや扁桃体だけの切除では記憶障害が起こらず,海馬の主要部分を取り除いても起こらない
- いまだ記憶保持のメカニズムがわかっていない
- いずれにせよ,この周辺は,記憶(記銘や再任)の過程に関わっている
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長期記憶のメカニズム
- 記憶の保持方法の機構(仮説の域を出ていない)
- 記憶物質説
- 活動電位巡回説
- 活動の痕跡説
- シナプス変化説
- 記憶の分散多重処理説(ホログラフィー説)
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記憶物質説
- 記憶情報が特定の物質そして脳内に蓄えられるという説
- DNAは変異でもない限り生涯普遍 $\leftarrow$ 学習や記憶には関係しにくい
- しかし,細胞の物質合成は変化 $\rightarrow$ タンパク質の合成を司るRNAの量
- タンパク質が記憶物質であるという仮説は下火
- 記憶の前後での脳状態は違っているから,何らからの物質的変化は起こっているだろう
- シナプスの長期的な変化を起こすためには,何らかの変化が必要
- 今後も検討される必要あり
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活動電位巡回説
- 感覚情報や運動情報が活動電位の発生頻度としてコードされている
- 記憶情報も活動電位として,神経回路内を巡っているのでは?
- ニューロンがいつまでも活動を続ける $\rightarrow$ 閉じた回路が必要
- しかし,記憶が続く限り活動が持続する必要があるなど,無理がある.
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活動の痕跡説
- 記憶時が保持されるには,特定の神経回路に活動電位が発生
- 活動電位がいつも巡回しているわけでなく,必要な時だけ活動電位が起これば良いという説
- いったん活動電位が発生する $\rightarrow$ しばらく興奮性が高まり,興奮しやすい
- つまり,記銘するときに働いていた神経回路は,痕跡があり,想起でも働きやすくなる
- 海馬では同様の反応が知られており,記銘と想起に関係しているという報告も
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シナプス変化説
- 現在もっとも有力な説
- 記憶に伴って,シナプスに何らかの変化が起こっているとするもの
- 記憶の保持は,シナプスが長期的に変化することで説明可能
- 一生涯にわたる記憶が存在する $\rightarrow$ シナプス変化が長期的かつ安定である
- シナプスの変化には形態的なものも機能的なものも考えられる
- シナプスを経由する信号の効率が変化すると考えられ,痕跡説を支持することにもなる
- 神経情報が流れやすくなることが記憶の保持と結びつけるとは限らない
- 1シナプス=1記憶説を否定
- 一つの記憶のために,神経回路網の多くのシナプスが変化をおこす
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記憶の分散多重処理説(ホログラフィー説)
- 記憶情報がどんな媒体で保持するかでなく,記憶がどのように保存されているかの話
- ホログラフィーのように,フィルムを重ねて保存することで荒っぽい画像として情報が保持されることにつながるという考え
- これを直接神経系に当てはめれないが,コンピュータによるシミュレーション技術で,この機構を再現することができるようになってきた
- (1)~(4)の仮説は,「多ニューロン=多機能」説を前頭としても成立する.
- つまり,おおくじの情報は分散して蓄えられている.
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網様体と意識
- 中脳から橋・延髄にかけては,脊髄から上行する線維と大脳から下行する線維が通過しているだけではなくて,様々な神経核が存在しており,基本的な生命活動の維持に関係した機能を持っている.
- ネコでは,中脳よりも上位の脳の部分を切除しても,呼吸,歩行,接触,鳴き声も可能
- この広い領域には,様々な通過線維と入出力を持っている網様体と呼ばれる部分がある
- 睡眠や覚醒の機構と意識をコントロールしていると考えられている.
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睡眠のメカニズム
- 睡眠中の生理的変化
- 覚醒時よりも起こっている
- 最も顕著な変化: 脳波に現れる
- 猫の脳波,眼球運動,筋肉の活動,呼吸,心臓の動きなどを,覚醒・睡眠中にモニター
- 睡眠には2つの生理的に異なった状態がある
- REM(Rapid Eye Movement)とNREM(Non REM)
- 覚醒状態: 大脳新皮質からはベータ波,辺縁形からはシータ波
- 安静状態: アルファ波
-
入眠状態: アルファ波がなくなり,紡錘波と呼ばれる特徴的な脳波
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- ノンレム睡眠の段階
- 4段階の深さの違いがある
- 3~4回,断続的に,レム睡眠期が訪れる
- 覚醒時とよく似ているが,眼球以外の筋肉は動かない $\rightarrow$ 夢を見ている
- レム睡眠時に起こすを繰り返す $\rightarrow$ レムの出現頻度が高くなる
- なぜノンレム睡眠の状態が必要なのかはよくわかっていない
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脳幹網様体と覚醒系
- 睡眠は,体内に蓄積した代謝産物が,毒素のように脳の活性を抑えると考えられてた時もある
- 脳脊髄液や血液の中には,睡眠を促進する物質が存在していることが生化学的な微量分析で確かめられている
- 脳の切断と意識の関係を調べる
- 脳幹を通過している繊維を切断 (延髄と脊髄の間)
- $\rightarrow$ 脳波には覚醒と睡眠のパターンが交互に現れる
- 中脳のレベルで切断
- $\rightarrow$ 完全に意識を失い,脳波も睡眠時に特有のもとなる
-
中脳の周辺: 睡眠と覚醒をコントロールする機構があると示唆
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- 麻酔時や睡眠時の猫の脳幹網様体(中脳網様体・橋網様体)を電気刺激
- 脳波が覚醒時と同じ低振幅の速波に
- 生理的にも行動的にも覚醒時固有のものになる
- この領域を破壊
- 脳幹網様体賦活系という概念
- 脳幹網様体が色々な入力を受けて活動を維持 $\rightarrow$ 脳の覚醒状態が維持
- 結果,師匠を通じて大脳に伝えられ,皮質全体を賦活することになる
- 電気刺激により睡眠が誘発される領域も
-
睡眠と覚醒のメカニズムは複雑